「救曲のタクト」の紹介です。         ⇒「宇宿允人の世界ファンサイト」

先日、変わった趣向のディナーショーに足を運んだ。

救曲のタクト」出版記念パーティーと銘打たれたもので、クラシックの室内楽を聞きながらフレンチのフルコースを食べようという何とも贅沢なショーである。

タクトとは指揮棒のことをいう。「救曲のタクト」なる本は、ある指揮者の半生を人生観、世界観を絡めて綴った自叙伝である。偶然なのだが、その指揮者、本の語り手である宇宿允人(うすき まさと)氏には何度かお会いしたことがあって(氏は覚えておられないと思うが…)、書き手である西村彰史(にしむら あきふみ)氏も以前に一緒に仕事をした仲であった。今月の初めのこと、西村氏がぶらりと会社にやって来て、

「本を出版することになった。記念パーティーを開くので良かったら来てくれないか」と、お誘いを受けたのだが、パーティーのチラシを見てビックリ。何と知った顔の写真が載っているではないか。

もうすぐ
70才になる指揮者・宇宿允人氏は音楽に関して妥協を許さない。N響(NHK交響楽団)出身で若かりしころはトロンボーン奏者として名をはせ、のちに指揮者となって「宇宿允人の世界」という名のコンサートを140回以上も行っているバイタリティに溢れた音楽家である。宇宿氏と親交が深いわけでなく、音楽に関する造詣も深くない私が述べるのはおこがましいのだが、彼の音楽は本物であり、彼の音楽に対する情熱は間違いなく本物である。遠めから見ているだけで、彼の発する一種のオーラのようなものが確かに感じ取れるのだ。

しかし、彼は別の意味で有名になってしまった。2ヵ月ほど前だったか、NHK教育テレビで彼のドキュメンタリーが放送された。ご覧になった方がいるなら、受けたインパクトは強烈だったかと思う。

コンサート前の練習で楽団員を激しく叱責する宇宿氏の姿……

「本物の音楽を創りたい」、そんな彼の情熱は演奏者に高い精神的、技術的レベルを要求することにつながり、彼の納得のいく音を出せなければ容赦なくカミナリを落とされる楽団員にとってはまさに“暴君”だった。それは傍目から見て時として行き過ぎと映ることがあり、音楽そのものでなく、檄高する指揮者として名が知られてしまったのだ。

対して、書き手である西村氏は非常に穏やかで、人の本当の心を知ろうと努力する方である。少し失礼になってしまうかも知れないが、私の知る限りでは“気難しい人”と付き合うのが非常にうまかった(笑)。

そんな彼だから、宇宿氏と対話を重ね、本を出版するという大事を成し遂げることができたのだろう。普通なら宇宿氏が自分の真意が伝わるものが書けていないと怒り、何度も何度も書き直しさせ、結局は書き手の方がキレて終わってしまうところだ。が、西村氏は根気良く宇宿氏と付き合った。宇宿氏の自宅に泊まりこんで生活を共にし、コンサートがあれば練習から本番まで立ち合い、彼の行動と心のすべてを知ろうとしたのである。

そんな努力を続けていくうちに西村氏の中で、巷で言われている宇宿允人の“人間像”は穿ったものではないかと感じるようになったという。先にも述べたように、彼の楽団員に対する厳しさは音楽に対する真摯な態度が表れただけのもの。音楽家として決して間違ったことではない。また、厳しくすることにより結果として楽団員がいい音を出せるようになるのなら、その厳しさは楽団員のためとも言える。そして現実としてあるのは、これまで140回以上も多くの人間を集めてコンサートを開いてきたということ。ただの暴君であったなら絶対に人は付いてこない。“心”があればこそ宇宿氏はここまでやって来れたのだ、と感じるようになったのである。

そう思ったときに西村氏の執筆意欲が高まったのだろう。そして、同時に宇宿氏も心を開いたのだと思う。元々が宇宿氏が音楽を続けるのは、氏の精神を表現するための手段の一つであるはず。だから、書き手がその精神を理解すれば、ペンは進むに違いないのだ。私の言わんとすることは本を読んでいただければ分かると思う。

「救曲のタクト」、すばらしい本である。

2人の心が通じてこそ仕上がったこの著。ぜひ、ご一読願いたい。

他の出版社の宣伝になってしまって三恵書房さんには申し訳ないのだが、了解をいただいたのでこの場を借りて「救曲のタクト」を紹介した次第である。宇宿氏の波乱万丈の生と精神論が書かれたもので、特に音楽に興味のない方でも面白く読むことができると思う。また、少し厳しく感じてしまう部分があるかも知れないが、社会に出る前の中高生に読んでもらいたい内容だ。自分も子供が中学生になったら読ませあげたいと思っている。

「救曲のタクト」に関するお問い合わせは下記まで……

東京経済 TEL 03−3237−7171インターネットでの注文もできます。
アドレス
http://www.alpha-line.co.jp/mbc21/



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