質問56 |
よく耳にするのですが、阪神競馬場のレースは何故、外枠が駄目と言われるのですか? |
答え |
私の1作目の本にも書いたのですが、競馬における最大の不公平が枠順の有利不利でしょう。しかし、これは何頭もの馬が一緒に走る以上、仕方のないことです。スタート後の直線が長いとその程度は軽くなりますが、すぐコーナーがあるコース設定だと極端に外枠が不利になります。その代表が阪神の芝1600ですね。ご質問には阪神のレースは外枠が駄目とありましたが、すべてのレースが外枠不利ということでありません。各距離でスタート後の馬の動きを見て、自分なりにどういったコースかを頭にイメージできるようになるのが理想です。
逆に外枠有利のコースもあります。中山のダート1200など、スタート後にしばらく芝を走るのですが、外の方が芝の部分を長く走れるので、外枠が有利になっています。府中のダート1600も同じ理由で外枠に利がありますし、阪神のダート1400、京都のダート1400も若干ですがそのように感じます。
ひとつ忘れないでいてもらいたいのが、乗っている騎手もそれを承知しているということです。例えば阪神芝1600で先行馬がいたとして、1番枠を引いたら包まれるのが嫌で一気に先頭に立つ可能性が高いでしょう。しかし、16番枠を引いたりしたら、無理に行くと脚を余計に使ってしまうので揉まれない形で好位につける作戦を取ってくるかも知れません。先行馬や人気馬がどの枠に入ったかで展開は大きく変わってきます。それが枠順の不公平なコースでは尚更なのです。
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質問57 |
以前は競馬関係の本によく書かれていましたが、今もヤリ、ヤラズはあるのでしょうか? 私はあって当然だと思うのですが…。プロが印を打つ場合にどのように反映させるのかもあわせて教えてください。 |
答え |
どこまで突っ込んで書いていいのか分かりませんが、ヤリ、ヤラズは確かにあります。最も一般的なのは、あるレースでわざと凡走し(ヤラズ)、人気を落としておいて次のレースで好走する(ヤリ)パターンです。仕掛けるのは厩舎と騎手であり、目的は馬券で儲けるためです。もちろん競馬法違反なのですが、現実には調教師でも騎手でも隠れて馬券を買おうとすればできてしまうのです。
ただ、今の中央競馬では難しいのも事実です。グリーンチャンネルの放映等々、これだけメディアが発達してしまうと、ヤラズの段階で必ず不信感を持たれてしまいます。もちろん発覚すればただでは済みません。ヤラズに関しては、いつ仕掛けてくるかは分かりませんし、予想する際にあまり考えない方が良いかと思います。
プロが考えるのは、ヤリの時です。あるレースで競走中に怪しげな動きがあって、次のレースで攻めを目一杯にやったり、騎手を変えてきたりした。そんな馬に対しては、予想段階で印を上げることがあります。
ヤリ、ヤラズはもちろん好ましいことではありません。といって完全に防ぐのも無理なのでしょう。公正な競馬を望みたいものですが…。
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質問58 |
まだ入門したばかりで何も分かりません。「連勝単式」と呼ばれる馬券について教えてください。 |
答え |
例えば「3番12番」の馬券を買うとして、連勝複式の場合は、「1着3番、2着12番」、「1着12番、2着3番」のどちらでも的中として認められます。これが連勝単式になると、的中は「1着3番、2着12番」で決着した時のみです。一般的に連勝複式は「連複」、連勝単式は「連単」と呼ばれています。
「3番12番」の目に対して「12番3番」の目は「裏(ウラ)」と言います。「3番12番」を買っていて、1着12番、2着3番で決まったときなど非常に悔しいものですが、これはよく「裏目を食った」と言われます。
もちろん1着、2着の順番まで当てないとならない連単の方が全体の点数が多いですし、当てるのが難しいですし、配当も高くなります。現在、中央競馬では連勝単式の発売はありませんが、今年の夏から発売が開始されます。売上喚起のための新馬券ですが、果たして競馬人気回復につながるのでしょうか? そのこと自体は前向きで良いことでしょう。ただ、他の改善すべき多くの点を棚上げにしているのですから、売上アップということは起きないというのが自然な考えかと思います。
馬券の種類が増えると、どんな馬券をどういうふうに買うかで悩まされてしまいます。が、基本は上位に来る馬を探すことであり、あまり振り回されたくないものですね。
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質問59 |
レースを見ていて、勝負は時の運が多分にあると思うのですが、プロの方はそうは思わないのですか? |
答え |
競馬はスポーツではなく、金を賭ける対象、すなわち「ギャンブル」です。「時の運」があってこそギャンブルとして成立しますし、不確定要素の多さこそが競馬がギャンブルの中でも王様たる所以なのではないかと私は考えています。
スタートで半馬身出遅れただけで結果は変わりますし、たとえ自分が買っていない馬でも、逃げるはずだった馬が出遅れれば競馬の流れ自体が違うものになってしまいます。道中で躓いた、前が塞がれた、バテた馬が下がってきた、4コーナーでふくれた、直線で前に入られた、究極的には落馬した、降着になった等々、レース前に予測が不可能なことはいくらでもあります。
そんなことも競馬を構成する一部なのですから、私を含めたプロの馬券師は、その「時の運」を重く考えています。そこから導き出される馬券の買い方は、配当が許す範囲内でできるだけ多くの保険を掛ける多点買いです。皆さんは「プロの馬券師は少ない買い目でビシッと勝負する」と思っているでしょうが、現実は逆で儲ける人ほど買い目は多いものなのです。
不確定要素を甘く見ているということは、「競馬を甘くみている」ということです。プロの馬券師は競馬の怖さを知っており、だからこそ「時の運」とうまく付き合いながら競馬で儲けることに成功しているのです。
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質問60 |
トニービン産駒は東京コースで成績が良いですが、たまたま好走が重なっただけではないでしょうか。ダートや長距離に強い種牡馬などは認めるのですが…。 |
答え |
数字で表れている以上、トニービン産駒=府中巧者という式を崩すことはできません。ダートで実績を挙げている種牡馬はダートに合う走りをする産駒が多く産まれるからで、長距離に強い種牡馬はスタミナのある産駒が多く産まれるからです。それと同じで、トニービン産駒は概して東京コース向きの走りをします。飛びが大きい傾向にあり、幅員が広く、直線が長いコースは打ってつけだからですね。
また、「トニービン産駒は府中向き」という傾向がこれだけ広まると、調教師や騎手といった関係者すべてがその意識を強く持つようになります。それによって馬の仕上げ自体を府中戦に合わせてくることになります。それも間違いなく実績をかたよらせている一因ですね。
ただし、これはあくまでも傾向であり、データです。全体を平均しての結果であって、馬一頭一頭をみれば府中がダメという馬もいるわけです。まず、自分の目を磨くことに努めてください。
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