競馬についての疑問解決します!!  質問メールはこちら        

質問75 「夏になると強い!」といわれる馬がいますが、私は他の馬より夏負けのダメージが少ないだけで、夏になって具合がグンと良くなることはないと思います。実際はどうなのでしょうか?
答え よく言われるように、サラブレッドは暑さに弱い生き物です。基本的にすべての馬が夏場を好きではなく、厩舎も体調管理に苦労します。しかし、夏になると目覚めたように走り出す馬が多いのは事実ですし、サラブレッドが夏に成長するものもまた事実です。実際の競馬を見ても攻め馬を見ても、全馬がいっせいに暑くなって動きが悪くなることもありませんね。夏は汗をかいて新陳代謝が進む時期です。厩舎が体調維持に努め、“夏負け”になるのを避けてあげれば馬にとってそう悪い季節でもないのです。

 優駿クラブに在籍する元トーシンブリザード厩務員の佐久間大地にも詳しく話を聞きましたが、男馬に比べて牝馬が夏場に強いのは確かとのことです。また、体が白いために熱がこもりにくい芦毛馬は暑さの影響を受けずらいという説がありますが、これは信憑性に乏しいとのことでした。

 夏場に限らず、サラブレッドの体調を見極めるのは重要なことであり、また大変なことです。攻め馬を見、厩舎のコメントを確かめ、可能ならパドックで実際に馬を見て、自分なりに判断するしかありません。そんな努力をした結果、見事に馬券を仕留めることができた時は本当にうれしいですね。

質問76

トラックマンやプロの馬券師の方は新馬戦を予想する時にどんなファクターを基にしているのですか? 私たち素人は新聞の予想の印しか参考にできないので…。

答え 「競馬研究」に籍を置いていた者として述べると、まず、新馬戦の予想において素人が新聞の印しか参考にできないというのは大きな間違いです。「競馬新聞」とは予想と共に「情報」を売っています。トラックマンがつかんでいる「情報」は商品として競馬新聞に掲載されており、それで競馬新聞社はお客様からお金をいただいているわけです。血統、調教時計、調教短評、関係者のコメント、様々なファクターが掲載されていますが、トラックマンもこれらをファクターとして検証し、予想を組み立てているのです。特別な点と言えばトラックマンは間近で調教の動きを見られることですが、これも調教を行う場所が各馬で違うので、十分に比較できるほどのデータを持っているわけではありません。

分かりづらいのは各ファクターの重要度の差でしょうか。例えば関係者のコメントに「勝ち負けになるよ」というものが2つあったとして、そのどちらがより強気なのかは確かに微妙ですね。そのあたりは競馬新聞の本紙予想かプロ馬券師の予想を見て判断するのが良いかと思います。

新馬戦とは不確定な部分が多くて難しいものですが、逆に面白い馬を発掘する楽しみもありますね。まず、人の印を気にせず、自分で印を打ってみることをおすすめします。そうすれば予想の精度は確実に上がっていくはずです。

質問77 「シンコウ」の冠で有名な黒の勝負服を最近見ないのですが、馬主さんは辞めてしまったのでしょうか?
答え ある馬主が瞬間的に活躍馬を多く出して、いつの間にかいなくなるのはよくあることです。皆さんは「馬主」というものは金持ちしかなれないといった認識があるでしょうが、実はケタ違いの金持ちでないと馬主になることはできないのです。現在の詳しい数字は調べていませんが、年収3,000万以上とか、資産2億以上とか信じられないような厳しい条件がありますし、あり余るお金を持っていたとしても、社会的な地位が確実な者でないと馬主資格は与えてもらえません。また、競走馬を持つには莫大なお金がかかります。500万円で馬を購入したとして、月50万×12の年間600万円のカイバ代を足すと、競走馬を1頭持つだけで年間1,000万は費用がかかる計算になります。もし、愛馬が走ってくれなかったら、回収はほとんどゼロになってしまいますね。

そんな馬主の世界ですから、何か事業をやっている人しかなれないのが現実です。事業が傾けば馬主を続けていくことはできません。ご質問にあった「シンコウ」は、ご存知の方も多いと思いますが、「新興産業」が馬主でした。小林亜星氏が出演していた「ぱっとさいでりあ」のCMで有名ですね。しかし、何年か前に会社が倒産し、馬を手放さざるを得なくなりました(現在は立て直しているようですが、他の企業の手が入っているのでしょう)。こんなことは競馬の世界ではよくあることなのです。困ったのは日本では馬主が冷遇されていることですね。JRAの規模からすると賞金があまりに低すぎで、プラス収支になっている馬主はほとんどいないのが現状です。ですから、莫大な経費がかかる競走馬を所有することによって本来の事業を圧迫することが多いのです。馬主で有名な和田アキ子さんも、稼いだお金をみんな馬に持っていかれてしまうそうですよ。馬主を続けていくのは本当に大変なことなのです。
質問78 サイレンススズカやショウナンカンプなど、逃げ馬の買い時、消し時について教えてください。
答え まず、「逃げ馬」、「差し馬」といった言葉に惑わされないように注意してください。ショウナンカンプなど、私には「逃げ馬」という印象はまったくありません。芝に舞台を替えてから3連勝で高松宮杯をも制しましたが、それ以前の3勝は好位から抜け出して挙げたものです。絶対スピードの違いでハナに立つことが多いですが、揉まれ込んで気分さえ削がれなければ差すこともできるのです。

「逃げ馬」の取捨は、まず、その馬が最大限に能力を発揮できる舞台かを確かめることです。そして次に、レースで気分良く走れる状況になるのかどうかを考えてください。前者に関して言えば、ショウナンカンプの函館スプリントSなど良い例だったと思います。ショウナンカンプの武器は軽い馬場で映える驚異的なスピードです。ダートでも脚抜きの良い馬場で強いですし、芝でも平坦コースで最大限に力を発揮します。今年の函館、特にローラーを掛ける前の1回函館3週目は極度に重たい芝で、明らかにショウナンカンプ向きではありませんでした。逃げざるを得ないプレッシャー、本気を出す必要がないレース、と他のさまざまな要因もありますが、直線で失速して当然だったとも言えるのです。

また、気分良く走れる状況になるかを考える時には、特に枠順に注意して下さい。雑に言ってしまえば、競馬は外枠有利です。新聞のコメントを見ていると分かりますが、「内枠を引きたい」というものより「外枠を引きたい」とのコメントが圧倒的に多いですね。先行馬が2頭いたとして、外からプレッシャーをかけられる可能性が高い内の枠を引いた馬より、その馬の出方を見ながらジックリ構えて乗ることができる外の枠を引いた馬の方が好走する確率が高いのです。とはいっても、その内の先行馬、外の先行馬が1番手、2番手で後続のプレッシャーを受けずに気分良く走れる状況だったら、いわゆる「行った行った」になるケースがでてきますね。

競馬は展開です。そして、杓子定規で測れぬ複雑なものです。今回、このコラムに書いたのも展開のほんの一部でしかありません。「逃げ馬」にもいろんなタイプがいて、「差し馬」にもいろんなタイプがいて、それらが絡み合ってレースが出来上がります。非常に奥が深いものですが、展開の読みこそが競馬の醍醐味であり、展開を読めるようになれば馬券の的中率も飛躍的にアップしますので頑張って勉強することをおすすめします。

質問79 サンデーサイレンスが死去したことにより、今後の日本の競馬はどうなっていくのでしょうか? 近年、サンデー産駒を中心に動いてきただけに気になります。
答え 確かにサンデーサイレンスの死去は日本の競馬界にとって大きな損失です。気性の悪さな3どが影響して優良な牝馬と配合されている割に勝ち上がり率が低いのですが、多くのGI馬を輩出し、日本の競馬を世界レベルに引き上げた最大の功労者でした。しかし、そのSSがいなくなったからといって、日本の競馬がレベルダウンすることはないでしょう。日本にはSSに負けぬ競走成績と血統構成を持った種牡馬が多くおり、その中から大種牡馬となる者が出てくるはずです。また、SSの血が途絶えてしまったわけではありません。息子たちが種馬として成果を挙げつつありますし、牝系に入ってBMSとして活躍馬を出してくれることと思います。

毎年、150頭もの牝馬と種付けしていたサンデーサイレンス。十分に優秀な仔たちを残しましたし、血の停滞の観点から見ても、このあたりでゆっくり休んでもらっていいのではないでしょうか。心から“お疲れさま”と言いたいです。



⇒質問メールを出す   ⇒質問一覧へ戻る    ⇒TOPへ戻る  


Copyright 2003 Sankei-Shobo All rights reserved.
本サイトに掲載の記事・写真・映像などの無断複製、転載を禁じます。すべての著作権は三恵書房に帰属します。