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質問85 競馬新聞の調教欄で「南」というのを見かけますが、これはどこの地名のことですか?
答え ご存知のように、JRAのトレーニングセンターは茨城県の美浦と滋賀県の栗東にあります。調教欄に「南」とあれば、それは美浦トレーニングセンターの南コースのことですね。美浦トレセンは栗東トレセンよりも規模が大きく、1周2000メートルほどもある大きなコースが2つあります。その2つのコースを北にあるものを「北」、南にあるものを「南」と呼んでいるのです。

南コースは4本に分かれており、内のAコースがダート、内から2番目のBコースがウッドチップ、3番目のCコースが芝、外のDコースがダートとなっています。今は多くの馬がウッドチップで追われ、一部がDコースや芝コースで、Aコースで追われる馬は稀です。一方、北コースは3本のコースがあり、内のAコースが障害用のコース、Bコースがダート、そしてCコースもダートとなっています。

この南コース、北コース、そして南のそばには小山と見間違うような坂路コースがそびえています。調教師や騎手、厩務員たちも暮らしている美浦トレセンはとてつもなく巨大な施設で、JRAの規模の大きさを感じさせてくれます。以前にも書いたことがありますが、もう少し一般の人に見学する機会を与えてくれるといいのですが…。

質問86 マンハッタンカフェの引退は残念でなりません。初めから凱旋門賞がラストランの予定だったなどと書いている雑誌もありますが、本当のところはどうなのですか?
答え 私個人の想像でしかないのですが、マンハッタンカフェは引退覚悟で凱旋門賞に挑んだのだと思います。渡欧前もそうでしたし、現地に着いた後の調教のニュースを伝え聞いても、順調と感じさせるものはひとつとしてありませんでした。結果的にステップレースを使うことができず、ぶっつけで世界最高峰のレースに挑み、レース中に故障して13着という結果です。もちろん故障してもいいやとかそんな気持ちだったはずはありませんし、小島太師のことですから力を出し切れる状態に仕上げていたとは思います。ただ、万全とまではいかなかったはずです。某雑誌には、「サンデーサイレンスの後継種牡馬にするために初めから凱旋門賞で引退の予定だった」、「凱旋門賞で敗れても傷はつかない」、などと書かれていましたが、あながち妄想ではないでしょう。マンハッタンカフェは元々が体質の強い馬ではなく、長く現役を続けられる保障はありませんでした。馬のことを考えると、このあたりで現役を退いて種牡馬として新たな道を歩んでいくのも悪くはないと感じるのですが…。よく言われるように、サラブレッドにとって、強い血を残すことは良い競走成績を上げることと同じぐらい重要なのです。

先に出たサンデーサイレンスの例もあります。マンハッタンカフェの故障が大事に直結することでなく、無事に日本に帰ってこれたことをまずはうれしく思います。

質問87 菊花賞の勝ち馬は予想可能だったのでしょうか?
答え あくまで私見になってしまいますが、菊花賞出走18頭を見て、単純に長距離適性が最も高いのはどの馬かとなると、勝ったヒシミラクルだったのではと思います。未勝利、500万下時代には追って追って渋太く伸びるレースを続けていましたし、前哨戦の神戸新聞杯でも4コーナー13番手からジワリと6着まで差を詰めていました。父がサッカーボーイ、BMSがシェイディハイツ、血統も完全に長距離系ですね。

最も大きかったのは、レースがスタミナ勝負になったことです。もし、最近の菊花賞に多いスローの瞬発力勝負になっていたら、出番はなかったことでしょう。ヒシミラクルの力と特性を見極めていて、且つ、望みの流れになることを予測できた人はヒシミラクルから馬券を買えていたはずです。実際、競馬新聞やスポーツ紙に◎を打っている人がかなり多かったですね。

馬には適性があります。例えば、テイエムオペラオーとショウナンカンプが戦うとして、新潟の直線1000メートルが舞台だったら勝つのはショウナンでしょうし、京都の3200メートルが舞台だったら逆にオペラオーが勝つでしょう。菊花賞のように距離経験が浅い馬ばかりが集まる競馬では、いつもと考え方のプロセスを変え、実績を捨てて予想を組み立てる必要性がありますね。やってみないと分からない面があるのは当然のことで、だからこそ菊の予想は面白いと私自身は思っています。

質問88

観客が盛り上がるのはいいことだと思いますが、ファンファーレに合わせた手拍子はどうかと思います。驚いてイレ込む馬もいますし、それで自分が買った馬が凡走したら悔しいです。もっと大きな事故になったりはしないのでしょうか?

答え 私もまったく同じ気持ちです。主催者であるJRAはレース前に騒がないようにと注意をうながしていますが、ファン(一部の)はどうやら聞く耳を持っていないようです。この件に関して、もっと厳しく規制すべきだとJRA批判をする人もいます。しかし、10万人とか15万人とかの人間を統制するのは難しいでしょうし、変に規制を作っても競馬場は気軽に行ける場所というイメージを壊しかねません。

結局のところ、ファン各人のモラルと自覚に任せるしかないのでしょう。ご存知のように、サラブレッドは極度に繊細です。競走に影響を与える以前に、大勢の人間の目にさらされ、大きい騒音を聞かされることがかわいそうでなりません。この場で訴えても状況が変わることはないのですが…。

まだ学生の時分に、東京競馬場のゴール板前で観戦していて、「将棋倒し」が起こりそうになったことがあります。後ろから悲鳴が聞こえて、非常に怖い思いをしました。過度の手拍子、声援は馬に影響を与えるだけでなく、人間自身も危険にさらすことになります。しっかりとマナーを守り、素晴らしい競馬が行われる手助けをしたいものですね。

質問89 日本の国際競走は海外からどんな目で見られているのでしょうか? ジャパンCやジャパンCダート以外、ほとんどの国際競走に参戦がないので…。
答え まず、海外に行くこと自体がサラブレッドにとって大きな負担になることはお分かりいただけると思います。例えば栗東に所属する馬でも、輸送の短い京都競馬場でなら良い成績を出せるのに、少し輸送が長くなる阪神競馬場では走れないといった馬が多くいます。狭く暗いところに閉じ込められて揺られ続ける輸送はサラブレッドには想像以上の負担を与えるもので、それが海外への20時間を超える空輸となると、その負担は想像を絶するものとなります。20キロから30キロの馬体減りは当たり前で、過去のジャパンC出走馬でも疲れが抜けずに力を出し切れなかった馬が多いのです。

そんな危険を承知の上で海外に遠征するには、何かの見返りがなければなりません。名誉でも良いですし、賞金が目当ての場合があれば、チャレンジスピリットで遠征を考えることもあるでしょう。名誉に関しては、日本が世界的に認められているGT競走は「ジャパンC」と、「ジャパンCダート」しかありません。「エリザベス女王杯」や「マイルチャンピオンS」も実は国際競走なのですが、このタイトルが欲しいからと海外からやってくる馬はいないというのが実情でしょう。また、賞金に関しても、いくら日本の競馬の賞金が高いとはいえ、あくまで良い結果を出せばの話です。そもそも、空輸自体に200万あまりのお金がかかり、賞金を得ることが出来なければ、大きな赤字が出ることになってしまいます。それならば危険を冒してまで海外に遠征することをせず、国内でより安全な賞金獲得を狙った方が良いという結論に達するのは自然なことと思います。

現状で「ジャパンC」、「ジャパンCダート」以外の日本の国際競走は外国の馬主、調教師から見て魅力のあるステージではないのでしょう。海外の力のある馬たちが活発にやって来る状況は考えづらいというのが正直なところです。


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