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質問95 馬の年齢と競走能力の関係について教えてください。
答え 12歳にして交流重賞・北海道スプリングCを制したオースミダイナーの活躍は記憶に新しいですね。中央から道営に移籍して通算4821勝。1000メートルから2100メートルまでの重賞を制し、そのタフネスぶりで人気者になっていました。

私の経験上で感じることですが、サラブレッドは10歳ぐらいまで大きくは衰ません。あるのは若干の肉体的な衰えと、精神的な衰えで、それが全盛期よりコンマ5秒とか、1秒とかの遅れになって表れるのでしょう。たったコンマ5秒の衰えでも成績は大きく悪化します。競馬とはそんなに甘いものではありません。ただ、相手関係や展開等で好走が可能になる範囲であることも確かで、だからこそ昨年のシルクロードSで9歳にして重賞初勝利を挙げたゲイリーフラシュのような例が出てくるのでしょう。8歳、9歳で低迷している高齢馬でも、クラスを一つ下げたら上位争いに加わってくる馬は多いと思います。

8歳、9歳と年齢を重ね、50戦、60戦してもなお頑張るサラブレッドの姿には心を打たれます。2月16日の今日、3歳牝馬のクラシック候補・ピースオブワールドの故障の報を伝え聞きました。皆が無事に競走馬としての生命を全うすることを願うばかりです。

質問96 レースにはハンデ戦とか、定量戦とかありますが、1キロの斤量の違いで走破タイムにどの程度の影響が出るのでしょうか?
答え 格言として一般に伝わっているのが、「1キロ=1馬身」というものです。数字が正しいかどうかは別にして、斤量差がもたらす影響の大きさを表すのに適切な言葉でないかと思います。競馬はクラス分けをすることによって極端なまでの力差のない中で行われており、少しのことが結果を左右するのは当然です。1馬身違えば、「1−2」が「1−3」にもなりますし、「3−4」とまったく目が違ってしまうこともあるでしょう。

以前にもこのQ&Aのコーナーで書きましたが、斤量の重い馬が走らなくなるというより、斤量の軽い馬がいつも以上の力を発揮すると考えるのが自然と思います。競馬とは非常に過酷なもので、背負っているものが軽ければ、追い比べで有利なだけでなく、道中の負担も少なくて済み、全体に与える影響が大きくなってくるのです。そして、斤量差が大きくなればなるほど、その影響の差は大きくなります。例えば4キロの斤量差の影響は2キロ差の影響の倍では収まりません。皆さんもハンデ戦で50キロとか51キロとかの軽量馬の好走を嫌というほど見ていると思いますが、それが当然であり、馬券的な狙いもやはりそこから立てるべきなのです。

「格上に挑戦して軽量で健闘した馬が自己条件に戻って人気になりながら凡走する」、よくあるケースですが、斤量差が及ぼす影響の重大さを示す一つの事例ではないかと思います。

質問97 シンザンはいつごろ亡くなったのですか? また、5冠を獲ったようなのですが、どんな競走成績を残したのですか?
答え シンザンがこの世に生を受けたのは1961年4月2日。40年以上も前の話で、私は実際にレースを見ていないどころか生まれてもないのですが、その強さは半端でなかったようです。よく故大川慶次郎氏が「シンザンタイプ」、「シンボリルドルフタイプ」と馬の特性を区分けしていましたが、スマートなシンボリルドルフに対し、がむしゃらに伸びて勝つタイプの代名詞としてシンザンの名前を挙げていたのです。

彼の成績は1915勝、負けた4戦もすべて2着。類いまれなる勝負根性で連対を外さず、狙いを定めたレースで先着を許すことはありませんでした。レース体系が確立する以前で「GI」という言い方はしなかったのですが、勝った大レースは「皐月賞」、「東京優駿(日本ダービー)」、「菊花賞」、「宝塚記念」、「天皇賞・秋」、「有馬記念」。それで5冠馬となります。

有馬記念後に引退した彼は種牡馬となって多くの優秀な仔を残しました。代表産駒はダービーの親子制覇を果たすこととなったミホシンザンです。また、父馬としてだけでなく、ブルードメアサイアー(母の父)としても活躍し、血統面から見ても日本の競馬界に残した功績の大きさは計り知れません。

10年ほど前になりますが、生まれ故郷である北海道浦河町の谷川牧場にシンザンに会いに行きました。もう30歳を超えていて馬房であまり動かず、さすがに名馬だったというオーラを感じさせてはいませんでしたが、その何年後かの1996年7月13日に残念ながら亡くなることとなります。齢は35歳と3ヵ月11日、競走馬の長寿記録を大きく塗り替えての大往生でした。

名競走馬として、名種牡馬として、最高齢記録保持者として名を残すシンザン。安らかに眠っていることと思いますが、谷川牧場には彼の功績を称える碑や銅像が立っています。一度、会いに行ってみてはどうでしょうか。

質問98 1レースの予想には、どれくらいの時間をかけているのですか?
答え 競馬新聞の記者やプロ馬券師と呼ばれる人が、どのくらいの時間をかけて予想しているかは皆さんも気になることと思います。個人個人の予想スタイルの相違や状況の相違(時間的な制約)から、これといった正解を挙げることはできませんが、一般的な線は2〜3時間といったところではないでしょうか。

各馬の戦績のチェック、状態のチェック、関係者のコメントのチェック等、調べ上げる項目は数知れませんし、記憶が薄れているレースを見直したりと他にも必要なことはたくさんあります。一頭一頭の出走馬に関してこの作業を行い、すべてが終わったところで全体の流れを考えてと予想を進めていくと、自然と2時間ぐらいは経ってしまいます。もちろん個人差はありますが、これまで競馬の世界で生きてきて周りの人達が予想するのを見ると、平均して2〜3時間ぐらいかなと思うのです。すべてのレースに関してこの時間を費やすことは現実的には不可能ですから、あまりに難しいレースは流して予想したり、軸が堅い場合にはサッと本命を打って相手を少しジックリ考えたりと、各人が適宜に方法を変えています。

私は今でこそ予想に集中することができますが、「競馬研究」に在籍している時は原稿執筆や校正がより大事なことだったので、予想に十分な時間を取ることができませんでした。皆さんも仕事が終わったあとに予想する方がほとんどでしょうから、そう長い時間を取ることはできないのではと思います。そんな場合はレースを絞って集中的に予想することをおすすめします。多くのレースを流して予想しても、予想自体が上達することはあり得ません。メインならメインと絞り込み、ジックリと時間をかけて予想し、レース後には自分の予想がどうだったのかと分析する。そんな作業を繰り返していけば、いつのまにか的中率が上がっていくものです。

質問99 レース登録の時点で一人の騎手が複数の馬に騎乗予定になっていることがよくありますが、このような場合は単純に騎手自身が強いと思う馬に乗るのでしょうか?
答え お手馬(今までずっと手綱を取ってきた馬)が同じレースに出るとき、騎手はどのような経緯で騎乗馬と選ぶことになるのか? これは皆さん気になるところと思います。結論から言ってしまえば、あまり深読みはしない方が良いでしょう。

まず、「選ぶ」こと自体ができない状況が多くあります。片方が所属厩舎の馬なら、そちらに乗るしかありません。厩舎に所属しないフリーの騎手でも、仲の良い調教師とか、つながりを深めておきたい調教師とかがいれば、弱い馬でも選択する場合があります。また、どのレースを使うか先々まで決まっているわけではないので、先に「次も乗ります」と言ったら、お手馬がバッティングしたときに選択する余地はなくなってしまいます。よく、「こちらを選んだのだから手応えを感じているのだろう」と、予想のファクターに入れる人がいますが、ちょっとしたスパイスぐらいに思って、能力分析や、馬の状態、展開の読みといった基本的な部分に重点をおいて検討を進めるのが良いかと思います。

今年の皐月賞で武豊は騎乗馬を選べる状況にあったのですが、結局はサイレントディールに乗りました。同馬はご存知のように武豊とコンビを組んでいたトゥザヴィクトリーの弟で、彼が粗い気性を丁寧に矯正しつつ頂点の舞台まで上がってきた馬です。深い愛着と思い入れがあったからこそ選んだのでしょう。いや、選んだという言葉はふさわしくないのかも知れません。

騎乗馬が決まる経緯には数え切れないほどのパターンがあります。特にスポーツ紙などで公表しているコメントは事実でないことが多々あるので、十分に注意してください。



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