質問100 |
重馬場の得意な馬と不得意な馬がいますが、それを見分ける方法はあるのでしょうか |
答え |
今はまさに梅雨の真っ只中。非常にタイムリーな話題なので取り上げたいと思ったのですが、あまり有効な答えを出すことができないというのが正直な感想です。それほどまでに道悪競馬は難しいものなのです。
ご存知の通りダートの道悪では基本的には脚抜きが良くなってタイムが速くなります。芝にも対応できるスピード馬が優位になり、また、スタミナのロスが少なくなって先行馬が活躍します。紛れが少なくなり、配当が低くなる傾向にありますね。
反して芝の道悪はこの上なくやっかいです。芝そのものというより、水を含んだ地盤がボコボコになり、脚は取られるは前の馬の蹴った泥は飛んでくるはで悲惨な状況になります。そんな馬場でうまく走れる道悪巧者がいたら信頼を置きたいところですが、そんな“道悪巧者”が泥をかぶって“道悪のために”簡単に負けたりするのです。
こんな馬も少なくありません。雨がイヤ、馬場を嫌うとかでなく、空から雨が降ってくるのが嫌いという馬です。競馬新聞のコメントで見つけることがありますが、繊細なサラブレッドのこと、そんなタイプもいるのです。ずいぶんと古い話になってしまいますが、10数年前に活躍したハワイアンコーラルという馬は雨がポツンと一滴体に当たっただけで走る気をなくしたそうです。そんな馬を見抜くのは関係者のコメントで見る以外は不可能ですね。
馬券がうまい人は道悪の場合には芝のレースで絶対に勝負しません。それが間違いなく正解でしょう。あえて傾向を挙げれば、泥をかぶらない逃げ馬が有利で、爪の小さい馬が悪い馬場を掘りながら走れるために有利になるということですが、それも決定打にはなりません。
芝の道悪競馬は遊び程度にしか馬券を買わない。後ろ向きに見えて、それこそが前向きなことなのだと思います。 |
質問101 |
15年前とかのレースを見ると、出走馬の頭数が10頭から多くて12、13頭です。ここ数年はフルゲートのレースばかりですが、本命党の私としては紛れが多くて馬券が的中しづらいと思っています。予想の上で出走頭数をどう検討材料に取り入れたらいいのですか? |
答え |
あくまで私個人の考えですが、“競馬”が競技として、またギャンブルとして行われるのに適切な頭数は12〜14頭だと思います(芝のレースで)。ご指摘にあったように16頭、18頭という頭数になると、必然的に不利を受けることが多くなり、馬券上の不確定要素は大きくなります。また、6頭立てとか8頭立ての少頭数の競馬では、ペースが落ち着きすぎる傾向にあり、スタート後の隊列のままで決着してしまうケースなどが出てきます。こんな場合は少しの出遅れや不利が致命傷になりますね。少頭数の競馬では逆に不確定要素が増えるとも言えるのです。
そんな意味で適当な頭数は12〜14頭だと思うのです。レース展開が読み通りに進むことが多いですし、少ないとは言えませんが不利を受けることも減ります。また、少頭数のときのような異常な低配当も見られず、馬券的にも買いやすいのではないでしょうか。
最近、特に思うのですが、多頭数でばかり競馬をやっている影響が少頭数の競馬に出てしまっていると感じます。馬群に揉まれて力を出し切れない競馬が続き、頭数が減ったところでイキナリ好走するというパターンです。先日、中京の準オープン戦で穴を出したイケハヤブサなど典型的なものでした。
馬券で勝負するなら12〜14頭立てのときに。多頭数なら馬券は遊び程度に。少頭数の競馬は逆に穴狙いに徹する。もちろん状況によって異なりますが、こんな気持ちを持って馬券を買うのもいいかもしれません。
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質問102 |
先日行われた帝王賞のゴールドアリュールの惨敗は納得がいきません。武豊はレース後に「絶好調ではなかった」とコメントしましたが、無理をして出走させたのでしょうか? これは競馬法違反ではないかと思います。また、競馬新聞等にはその事実が書かれておらず、厩舎が絶好調でないことを隠していたのならファンに対して失礼です。この惨敗に関して、大谷内さんの意見を聞かせてください。そして、一般の人が事前に予見することが可能だったのかを教えてください。 |
答え |
いい機会と思うので、”競馬の現実”について述べようと思います。長くなりますが、お付き合いください。
まず、「競走馬が絶好調でレースを使えうことはほとんどない」、そのことを理解して下さい。あのか細い脚で500キロの体を支え、しかも60キロものスピードで走るサラブレッド。体にかかる負担は人間が全力疾走したときの比でなく、少しのことで爪を悪くしたり、脚を悪くしたりします。また、その負担は体全体に影響を及ぼし、脚を骨折したときなど最終的には内臓疾患を引き起こして命を落とすことが多いのです。皆さんも歴史に残る名馬が故障でターフを去っていくのを幾度となく目にしていると思います。また、一つのレースを取り出してみると、久々の馬と叩き2戦目が多く、順調に使われている馬の占める割合がいかに低いかが分かると思います。
故障に関しては高速馬場の問題などが指摘されますが、サラブレッドが故障するのは産まれる前からの宿命なのです。人間がより速く走るように品種改良し、その代償をサラブレッドが受けてしまっているのです。
実はゴールドアリュールは帝王賞の前のアンタレスSで状態が万全でないという情報が流れました。それで結果は1秒3差の圧勝です。私はその情報を知っていながら、悪い状態という情報ではないし、これだけの馬を出走させる以上は確実に結果を出すはずだと考えて堅い軸馬として優駿クラブの会員に推奨しました。
ご質問にあった「競馬法違反ではないのか?」という部分は、「勝つことを目的として出走させなければならない」という条項をさして言っているのではと思います。それならばある程度の力を発揮できる状態なら出走させても構わないのではないでしょうか?もし、本当に絶好調のときにしか出走できないとしたら、走れることすらできない馬ばかりになってしまうでしょう。出走全馬が絶好調の状態で戦うというのはあくまで理想論。しかし、それを分かった上で、それでも胴元である主催者が義務として掲げるのも納得のいかないことではありません。
次にレース前に池江師と武豊騎手が絶好調でないことを公表しなかったことに関する私の考えです。もちろんほぼ力を出し切れる状態にあったことが前提としてあるでしょうが、現実にはとても言えないと思います。それを話せば騒がれて問題になるに違いありません。これはマスコミの能力の問題と、一般ファンの見識の問題が裏にあるからと感じます。「絶好調ではない」、こう聞くとマスコミが騒ぎ立てるのは目に見えています。無理に強調する評論家も多く出てくるでしょう。また、競走馬が皆何かしらの不安を抱えて走っていることを理解していないファンは必要以上に敏感になります。勝ったら「絶好調じゃないというのは嘘だったんじゃないか?」、負けたら「なぜ出走させたんだ」。こうなるのは分かりきっています。もし自分が調教師だったら、これだけの人気になる馬を管理していて、悪いコメントなど怖くて出せません。不幸にもゴールドアリュールが惨敗したことによってこの問題が過度に注目されることになっただけで、管理する池江師と武豊騎手の取った姿勢が間違っているとは思えないのです。
では、アリュールの本当の敗因は何だったのか?
もちろん絶好調でなかったからとも考えられるのですが、実際は違うのではと私は考えています。おそらくは突発性の呼吸不全。ノドノド鳴りを急に発症したとか、そんなところでしょう。サンデーサイレンス産駒特有の気の悪さを出してしまったのかもとも思いましたが、それでは武豊騎手の「向正面で急に呼吸が苦しくなった」とのコメントと整合性が取れません。他に軽い心房細動の可能性も考えられます。
また、ご質問に「一般の人が予見できたのでしょうか?」とありましたが、これは一般の人もプロの予想家も関係者もなく、無理だったとしか言えません。圧勝したアンタレスSと惨敗した帝王賞で、調教の動きや馬体の造りも含めて状況の大きな相違はなかったからです。
単勝110円、ゴールドアリュールの衝撃的な敗北で改めて競走馬の危うさ、競馬の厳しさを知った思いです。冒頭でも述べたように、”競馬の現実”を理解し、その上で競馬を続け愛してほしいと思います。調教師、厩務員、騎手、そして競走馬…、彼らは命をかけてギリギリのところで戦っているのです。 |
質問103 |
岡部騎手はどうなったのでしょうか?大好きな騎手なので気になって仕方ありません。近況を教えて下さい。 |
答え |
久しくターフで岡部騎手の姿を見ていません。何とも寂しいですね。
岡部騎手は今年(2003年)の10月で54才になります。ジョッキーとは体を酷使するハードな職業で、50才を超えれば体にガタがきて当然です。詳しい時期は覚えていないのですが、昨年に落馬の影響で首の後ろの頚椎が狭窄する状態になり、レースに騎乗することができなくなりました。幸い症状は重くなく、その箇所は完治したのですが、今度は左足の半月板を損傷し、手術をしなければいけない状況になりました。今年の初めのことです。現在は左足も良くなっています。ただ、昨年の頚椎損傷、今年の半月板と大きな怪我が続いたため、落馬したらまた頚椎を痛めないかとか心の面に少し影響が出ているようです。
競走馬に騎乗することの怖さは私たちには想像がつきません。しばらく時間が必要なのかも知れませんね。それに岡部騎手は一流ジョッキーです。少しでも満足のいく騎乗ができない可能性があれば、プロとしてレースに乗ることはしないでしょう。
伝え聞いた話になりますが、そんな状況の中で岡部騎手は復帰する意欲がすごいとのことです。不屈の闘志で再びターフに戻ってきてくれることと思います。そして、以前と同じような活躍を見せてくれることでしょう。
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質問104 |
最近、「チークピーシズ」という言葉をよく耳にします。馬具のようですが、どういったものなのでしょうか? また、効果はあるのでしょうか? |
答え |
2ヵ月ほど前から見かけるようになり、最近はだいぶ装着する馬が増えてきました。馬の視界を遮断する馬具で、「チークピーシズ」とか「チークピース」とかと呼ばれています。「チーク」とは「頬(ほほ)」のことですね。チークピーシズは20〜30センチほどの細長い角ばった筒状のもので、それを左右両方の頬にあてがって馬の視界を遮るのです。その遮断する程度は直接目の周りを覆うブリンカーに比べたら小さいものでしょう。ただ、装着した馬の好走確率は現時点でかなり高く、効果は大きいと考えざるを得ません。
今はブリンカーと違って出馬登録時の届出の義務がなく、ファンはパドックの段階になってみないと着けているかどうか分かりません。今後はさらに使用例が増えることが予想され、そうなればJRAも事前発表することを考えるでしょう。
ブリンカーや拍車を装着するときと同様のことが言えますが、何らかの馬具を装着して挑むということは陣営が馬に対して可能性を感じており、馬具を使用することによって変わって欲しいと思っているからです。基本的に勝負態勢と判断して良く、実際の馬具の効果と相乗効果が生まれて好走確率が上がるのです。
チークピーシズを装着している馬を見つけたら、意欲的に狙ってみましょう。発表がされない今だからこそ高配当になるという見方もできるからです。
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