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平安ステークス(GIII)     1月23日(日) 京都競馬場 ダ・1800メートル

1着 ヒシアトラス    1分50秒3
2着 ブラックコンドル   3馬身1/2
3着 ジンクライシス     3/4馬身
単 勝   800円
馬 単  9,200円
馬 連   4,340円
3連単  31,470円

 「前の2頭が内を開けたのが…。もっと厳しい競馬をしないといけないよ」とは、4着のサカラートに騎乗した武豊のコメント。その言葉の通り、1枠から先行した2騎が直線で内を開けたことで、内を突いた者が優位に立つ展開になった。一方で、1番人気のジンクライシスと2番人気のピットファイターはデキがひと息で結果を出せず。正直、あまりいい競馬ではなかった。

 このレースで最も注目度が高かったのはジンクライシスがどんな走りを見せるかという点だった。昨秋のジャパンカップダートで3歳にして3着に健闘した素質。今年は平安Sを勝ってフェブラリーSへとの青写真を陣営は描いていたようだが、緒戦でいきなり出鼻をくじかれてしまった。
 万全の状態ではなかったのだろう。いつもなら行きたがるのを制御しなければならないジンクライシスの気性だが、今回はスタートが悪くて1コーナーまでの行きっぷりも良くなかった。道中は外々を回る形。3コーナーを過ぎて勝負どころに差しかかっても内がゴチャついて外を回すしかない。ひどくロスの多い競馬になり、直線はジリジリと3着に上がるのが精一杯だった。
しかし、見方を変えれば、あの競馬で3着に来ること自体が驚異的だと言っていい。普通ならゴールに到達する前に脚が上がっているはずで、現実に5着に入った6頭(5着は同着で2頭いた)の中で外を回ったのはジンクライシスだけだった。
 今回の敗戦でフェブラリーS出走はむずかしくなった。でも、別に慌てることもないだろう。ゆっくりとステップアップして、再び秋にジャパンカップダートに挑戦すればいいだけのことだ。先につながる3着だった。

 2番人気のピットファイターも行きっぷりが悪かったし、15番枠スタートで外を回る競馬を余儀なくされた。中間は攻めが不足気味で、当日は馬体を太く見せていた。動きが鈍かったのは、そのあたりに原因があるだろう。4コーナー前で藤田が必死に手綱をしごいているのに、ピットファイターは前に出ていこうとしなかった。直線はバテるように失速し、見せ場なく11着に敗れた。これが力ではない。次走であらためて期待したい。

 勝ったヒシアトラアスは最内を通った利を活かし切った。4番枠スタートから道中は内々を進み、最短距離をロスなく回ってくる。先団がゴチャつく展開で普通なら直線で行き場を探すのに苦労するところだが、逃げたクーカイが直線でヨレるように外に行ったことで、最内にスペースができた。すかさずそこに入って、不利を受けるのをまぬがれた。
それにしても抜け出すときの脚は強烈だった。騎乗した福永が「今日の手応えなら、たとえわずかしかスペースがなくても突き抜けていただろう」と話したのにもうなずける。3馬身半差の圧勝劇。馬場が速かったといえ1分50秒3の勝ち時計も速い。まさに文句なしの勝利だった。次はフェブラリーSになるが、この勢いはGIでも怖い。

 2着のブラックコンドルも内を進んだクチだ。道中の位置取りはヒシアトラスの少し前。やはり経済コースを通り、直線はクーカイとローエングリンの間に入って脚を伸ばした。ジリジリという感じだったのは、元から決め手があるほうではないから。しかし、持ち味である渋太さをアピールすることができた。4歳馬でまだ強くなる。

 4着は武豊騎乗のサカラート。冒頭で述べたように、周りの騎乗姿勢に対する不満が大きかったようだ。「みんながもっと厳しいレースをしてくれれば2着はあったと思う」と、悔しさを漏らした豊。サカラート自身も外に少し振られているわけで、こんな言葉が口をついて出るのも当然だろう。サカラートは久々でこれだけの走りができるのだから、さすが京都ダート1800mのレコードホルダー。次が非常に楽しみだ。

 5着は同着でホーマンベルウィンとクーリンガー。ホーマンは3コーナーで挟まれる不利があったが、直線は内を捌いてグイグイと伸びてきた。しばし続いていた不本意な競馬を吹き飛ばす今回の走り。明けて8歳でも馬は元気で、今後も重賞戦線で応戦を見せてくるだろう。クーリンガーは好位でタメる形。そこから早めにスパートする作戦だったようだが、肝心の4コーナー前でゴチャついて抜け出ることができなかった。直線はバテているわけではない。結果論だが、強気に先行したほうが良かった。

 3番人気で単騎逃げが予想されたローエングリンは2番手に控える形で14着と惨敗した。元から無理に行く気はなかったようだが、それにしてもスタート後の走りは本来のローエンのものではなかった。気分屋なのでこんなこともある。ダートはダメではないはず。


 【最強の男の3連単予想】は外してしまった。ジンクライシスとローマンエンパイアが一緒に2着に入らないといけない買い方だったのだが、この2頭が劣勢だった外を回った組の中でも最も外を回っていたのだから話にならない。
 競馬がどんな流れで、どんな展開になるかはレース前に100%はわかり得ない。この平安Sも、もしローエングリンが必死に押してハナに行っていたら、道中の流れも最終的な結果もまったく違うものになっていただろう。そんな状況の中で、可能性の高い展開をどう見つけていくかが予想する側にとっては重要になる。その精度が上がれば馬券が当たる確率も高くなっていく、とそういうわけだ。
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